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My Favorite Horse Vol.30 ナリタタイシン

逃げ馬と追い込み馬。今はどちらが好きでどちらが嫌いという区分はしていないが、かつては圧倒的に追い込み馬が好きだった。
逃げ馬にはエイシンバーリンやキョウエイマーチといった好きな馬相手に逃げ切ってしまうという、嫌なイメージを植え付けてくれた馬が多々いた。ミホノブルボンはサイボーグめいた強さが強すぎる故に拒否反応が出たし、ツインターボはオールカマー以降の好事家の勝手な美学を押し付けられた痛々しい扱われ方が好きになれなかった。逃げ馬に対する認識が変わったのはセイウンスカイからである(マヤノトップガンは脚質云々関係なしw)。
あと、逃げ馬は捕まってしまえばそれで終わりだが、追い込み馬はゴールまで何が起きるか判らないスリルを最後まで楽しめる。大勢決したという場面からの大逆転劇は爽快以外の何物でもなかった。それを決定的にしたのがナリタタイシンの皐月賞だった。

正直、皐月賞以前のナリタタイシンは特別好きだった訳ではない。ラジたんやシンザン記念はリアルタイムで見てなかったし、弥生賞は同じ様な位置から動いて突き抜けたウイニングチケットの方がインパクトが強かった。このまま、ウイニングチケットが春二冠を取るだろうとすら思っていた。
だが、弥生賞からタイシンに騎乗した武豊は末脚の持続力勝負ではウイニングチケットに勝てない事を悟り、皐月賞では一瞬の切れ味を最大限に引き出すべく、ギリギリまで溜めに溜めて直線勝負に出る。
果たせるかな、折り合いを欠いたウイニングチケットが伸びあぐね、正攻法の競馬から抜け出したビワハヤヒデが押し切るかに見えたところでガレオンと共に大外から急襲し、ゴール寸前で差し切ったのはタイシンだった。

420キロ台の小柄な馬体、しかも直線半ばでガレオンに弾き飛ばされる不利を受けながら、ビワを差し切った末脚の破壊力は素人目に判る強烈なインパクトであり、惚れ込むには十分だった。
そして、好位差しが絶対ではない事を悟っていた武豊に一瞬の切れが持ち味の追い込み馬の乗り方を教えた馬ではないかと思う。3強対決となったダービーは3着に敗れたが、変な色気を持たずに確立した直線勝負に徹し「ダービーを勝つコツが判った気がする」と述懐している。その言葉は6年後、アドマイヤベガとのコンビで先に動いたテイエムオペラオーとナリタトップロードを後方待機から測ったように差し切った2度目のダービー制覇で実証したと言えよう。

ダービーで改めて3強を確立したタイシンだが、その後の競走生活は波乱に満ちたものとなった。多くの有力馬が休養に入る中、当時は夏に施行されてた高松宮杯(2000m)に出走したが、伏兵の逃げ切りを許して2着。京都新聞杯は肺出血で回避し、菊花賞はマトモな状態ではないにも拘わらず出走させられ、心房細動で目を回して40秒離されたネーハイシーザーを除けば実質的な殿負け。
この調教師には【レースを使う事で馬を強くする】という持論があり、後年もナリタブライアンのローテで様々な物議を醸した。その持論で強くなった馬もいるが(シルクジャスティスとか)、距離体系も未整備、調教技術も発達してない時代の化石じみた観念に基づいた持論だ。タイシンを強くしたのは否定しないが、この持論がタイシンのキャリアを大きく変えたのは間違いない。

菊花賞惨敗後、タイシンは2月に施行されてた目黒記念で復帰。菊花賞惨敗、小柄な馬体に酷量と言える58.5キロもあって人気はステージチャンプに譲っての2番人気だった。
しかし、タイシンは3強の意地を見せた。いつも通り後方に控えて4コーナーまで動かず。直線で大外へ持ち出すと全馬ごぼう抜きの末脚炸裂。武豊は「この馬の切れはこんなものじゃない」とコメントしたように皐月賞の方が切れてはいたが、臨戦過程が過程だっただけに全馬なぎ倒すかのような末脚で復活したのは本当に嬉しかった。【ビワハヤヒデ何するものぞ】と。
だが、菊花賞で圧勝して一皮剥けた感があったビワとは成長力で大きく水を開けられていた。
天皇賞はビワ有利の展開の中でタイシンはこれ以上ない騎乗を見せた。4コーナーでスッと中団に取り付いた時はゾクッと来るものがあった。直線半ばでビワに迫った時は「おおっ!」と声が出た。だが、そこから鞭が入ったビワは更に伸びて突き放した。タイム差は僅か0.2秒差だが、この差は詰められないだろうと思わせる腹立たしい強さだった。

その後、タイシンは骨折に体調不良、屈腱炎と故障に悩まされ、ライスシャワーが散った宝塚記念を最後に引退した。
早世したリヴリアの後継種牡馬としてそれなりに期待されたが、ビワもチケットも成功しなかったとはいえ、それなりに活躍馬を出したのに対し、悲しいくらいに産駒は全く走らず。2003年に早々と種牡馬引退となった。

30歳となったビワもチケットも未だ健在。3強の中で表舞台に最後に現れたタイシンが最初に逝ってしまうとは何の皮肉だろうか。合掌m(__)m

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My Favorite Horse Vol.29 シルクジャスティス

1997年の毎日杯。早め先頭のヒダカブライアンを中団からテイエムトップダンが交わしに掛かり、この2頭で大勢決した後の3着争い。1頭の栗毛馬が後方から猛然と追い込んでゴール前で頭一つ抜け出した。これがシルクジャスティスとの最初の出会いだった。
尤も、この時はデビュー7戦目のダートで勝ち上がった直後、鞍上も【共同通信杯のエリモダンディーで下手こいた奴】の河北だったから、人気薄で3着に来たという以外は特に印象に残ってなかったりする。この時は骨折明けで完調手前のヒダカブライアンにビビったな(調教師が違えば・・・)。

その名前を強烈に印象付けられたのが次走の若草Sだった。スポーツニュース番組の企画で江川卓が一口所有して話題になったバーボンカントリーがマイペースの逃げを打ち、そのまま逃げ切るかと思われたゴール前で大外からブチ抜いていったのが武豊に乗り替わったシルクジャスティスだった。
当時は追い込み馬大好き人間だったから、典型的な前残りの展開で後方2番手から大外一気を決められた日にはそりゃ惚れるしかないわけでw翌日のサニーブライアンの皐月賞逃げ切りが心情的に容認出来ず、この馬に対する期待は更に強くなった。

それが決定的になったのが、京都新聞杯が春に移設される前に行われてた京都4歳特別だった。ここで立ちはだかったのがサンデーサイレンスの宿敵イージーゴア産駒の外国産馬プレミアムサンダーである。
プレミアムサンダーは長らく京都ダート1800mのレコードホルダーとして名前が残っていたが、足元がマトモだったらその程度で終わる馬じゃなかった。桜花賞当日の君子蘭賞では不良馬場で後方からの競馬を強いられながら、後の菊花賞馬マチカネフクキタルを大外から差し切っている。
武豊は既に牡馬クラシックでランニングゲイルというお手馬がいたのもあるが、シルクジャスティスの騎乗以来を断ってプレミアムサンダーを選択。その後も豊はシーキングザパールのモーリス・ド・ギース賞騎乗で乗れなかった以外は最後までプレミアムサンダーに騎乗している。
シルクジャスティスの新たなパートナーは最後まで手綱を取り続ける事になる藤田伸二。今の藤田には何の興味もないが、何回でも書くが当時の怖いもの知らずの攻撃的な騎乗スタイルで売り出してた藤田は頼もしい騎手だった。そして、京都4歳特別はマーク屋に徹してライバルを負かす藤田らしい騎乗だった。
好位からレースを進め、勝負所から早めに先頭を捕まえに掛かるプレミアムサンダーを後方待機から捲り気味に動いて射程内に捉えるシルクジャスティス。3着以下を千切り捨てた直線の激しい叩き合いの末にプレミアムサンダーを下し、ダービー出走の権利を勝ち取った。

関テレの馬場アナの「シルクジャスティス!これが関西最後の秘密兵器!」は好きなフレーズの一つだが、俺にとっては秘密兵器以上の存在になった。これでGⅠ勝たなければ嘘だろうと。ダービーは初めて徹夜で開門待ちをしてしこたま馬券を買ったが、フロックではなかったサニーブライアンの逃げを捕らえ切れず2着。それでも、逆に思い入れは強くなった。距離が伸びた方が良いタイプなのは明らかで菊花賞なら逆転出来ると。

秋初戦の神戸新聞杯は太目残りもあって捲って見せ場を作る程度だったが、叩き2戦の京都大賞典は4角最後方からダンスパートナーを差し切って持ち味の末脚が古馬相手でも通用する事を証明。
サニーブライアンは骨折休養、サイレンススズカは中距離路線に向かい、メジロブライトは秋も詰めの甘さを露呈し、マチカネフクキタルは血統的に距離不安と一長一短。菊花賞は間違いなくこの馬が勝つと確信していたが・・・
その菊花賞は3~4コーナーでゴチャつく不利を被ったのが響いて1番人気を裏切る5着。果敢に挑戦したジャパンCはスローペースからの決め手比べで展開不向きで5着。消化不良なレースが続いた状況で有馬記念を迎え、俺にとっては究極の選択を迫られる事になる。シルクジャスティスと同等に肩入れしていたメジロドーベルも出走して来たのだ。

以前、このコーナーでドーベルの父メジロライアンについても触れた事がある。あと一歩届かないもどかしさと【俺の馬が一番強い】と強気の姿勢を崩さない横山典弘が主戦の大好きな馬だった。そんな父の果たせなかったクラシック制覇を成し遂げた孝行娘がドーベルだった。
そして、ドーベルの主戦を務めていたのは【東の豊】こと吉田豊。木刀事件以降はそこまで肩入れしなくなったが、関東の穴男として頭角を現し、ドーベルとのコンビで一気にブレイクした吉田豊は藤田程ではないが、将来を期待してた大好きな騎手だった。
どちらを軸にするか非常に迷った。ある程度実力差がハッキリしていれば良かったのだが、当時のメジロドーベルは他世代の一線級と走った経験がなかったが、準牝馬三冠馬で底を見せていなかった。一方、シルクジャスティスは京都新聞杯でダンスパートナーを下し、ジャパンC5着と一定の実力を示していた。

迷いに迷った挙げ句、軸にしたのは展開に注文が付くシルクジャスティスではなく、未知の魅力があったメジロドーベルだった。直線でマーベラスサンデーとエアグルーヴの叩き合いをシルクジャスティスが外から差し切った時は嬉しさよりも「何で俺は軸で買わなかったのだッ!」という後悔が勝ったのは言うまでもない。
ただ、見立て通りGⅠ馬となったシルクジャスティスは年齢的にまだまだ強くなると思っていた。今回は悔しい思いをしたが、来年は馬券的にも喜べるレースが必ずあるだろうと思っていた。
だが、これがシルクジャスティスにとって最後の勝利だった。翌年の阪神大賞典はメジロブライトの僅差の2着に好走したが、1番人気に支持された天皇賞・春は4着。それ以降は実績からそこそこ人気にはなるが、かつての目の覚めるような末脚は最後まで戻らなかった。
同厩舎のエリモダンディーが腸捻転で急死してから走らなくなったというのは良く知られている話である。馬格が小さく、他馬に威嚇されて怖がっていたエリモダンディーをシルクジャスティスが庇い、やがてエリモダンディーはシルクジャスティスの後ろを付いて行くようになった。2頭は併せ馬で追い切りを行い、切磋琢磨する形で2頭共強くなったが、エリモダンディーが死んだ事で併せ馬のパートナーを失ったシルクジャスティスは真面目に走らなくなってしまったと。まぁ推測の域を出ない噂話のレベルではあるが。

種牡馬入りしたシルクジャスティスだが、旬を過ぎてからの引退と種牡馬入りと2年目に生まれ故郷の早田牧場が破産して早田のバックアップを失ってしまったのが不運だった。中央ではバシケーン(中山大障害)以外は全く走らず、地方重賞馬を複数出した程度でひっそりと引退。最後に繋養されていた畠山牧場で余生を送っていたが、老衰で3日に死亡。

一番暑苦しく競馬にのめり込んだ時期にクラシック戦線で活躍した馬が亡くなるというのは他の時代よりもちょっと感傷に浸ってしまう。それがシルクジャスティスなら尚更だ。合掌m(_ _)m

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My Favorite Horse Vol.28 ムスカテール

5年前、このコーナーでメイショウトウコンを取り上げ、最後は【GⅠを意識させる産駒の登場を待ち続けている】で締めたが、内心は新潟記念出走を控えてたムスカテールがそうした存在になってほしいという願望もあった。
その新潟記念は1000万上がりの格上挑戦で11番人気の低評価ながら、不利を受けなければ勝ってたかもしれない僅差の5着。着差が着差だけに不利に腹立たしさはあったが、軽ハンデの恩恵があったとはいえ正攻法の立ち回りで通用した点である程度の手応えは感じた。順調に行けば来年はもっと上のクラスで戦えると・・・

コイツはいずれ重賞に手が届く!

贔屓目込みの直感だったが、そう感じたのはムスカテールの2戦目を見た時だった。1番人気だったとはいえ、デビュー戦後の一息入っての休み明けでプラス12キロとやや余裕残しの馬体だったが、正攻法の立ち回りで危なげない勝ちっぷり。
平場とはいえ、新馬から2連勝するトップガン産駒はそういなかったし、新馬戦で負かしたトレンドハンターがフラワーCを勝ってたのもあった(直後の桜花賞も3着)。
更に、腰の甘さが残ってる状態で勝ち切ってるのも直感に拍車を掛けてた。【これで腰がパンとしてくれば、芝でもいけるんじゃないだろうか?】と思わせる印象だった。勢い余って【大佐キター!!】と掲示板に書き込み、その呼び名が最後まで定着したのはご愛敬w

大佐の3戦目がダービートライアルのどれかと知った時は【ひょっとしてひょっとすると!?】と期待したが、プリンシパルSは出遅れが祟って5着。続く白百合Sも出遅れて差し届かずの4着と芝適性を示すまで。
ただ、この2戦は【外来にも漬物石がある】と知らしめたピンナに乗られてたのも大きなマイナスだった。腰の甘さによる出遅れは仕方ないにしても、2戦共工夫のない大外ブン回しとか未だに思い出すだけで胸糞悪くなる。
この2戦以降【大佐には継続して乗ってくれる主戦が必要】と思ったが、最後まで主戦と呼べる騎手は定着しなかった。強いて挙げるなら岩田かウチパクだが、主戦と呼べるまでには至らなかったと思う。
口向きの悪さや手前を替えない点等、主戦を固定すればある程度の矯正は可能だったと思うが、それは叶う事なく、次第に左回り限定でしか走れなくなってしまった。いずれにせよ、身体がまだ出来てなかった3歳秋~4歳夏まで我慢の競馬が続く事になる。

4歳秋に復帰した大佐は新たなパートナーとなったウチパクとのコンビでOP入りを果たし、AR共和国杯で重賞初連対。ビュイックが騎乗した日経新春杯はハンデ差もあってスムーズに立ち回った勝ち馬を捕らえ切れなかったが2着。ウチパクに戻った日経賞は内にモタれながらも3着と3戦連続複勝圏内。
天皇賞・春は大外枠に加えて口向きの悪さ全開(だから主戦を固定しろと(ry)で大敗したが、重賞勝利目前まで力を付けたのは明白。秋に向けて期待値は否応なしに高まって行った。そして、チャクラ、キングトップガンが勝利し、マヤノトップガン産駒にとって相性の良い目黒記念に出走する。

1番人気はダイヤモンドSを勝ち、天皇賞でも4着と好走したアドマイヤラクティ。2番人気は前年のAR共和国杯で大佐を下したルルーシュ、3番人気はメトロポリタンSを勝ってOP入りした元PO馬のカフナで大佐は4番人気。
他にも、大佐に2度先着した因縁のあるカポーティスター、ヒットザターゲット、タッチミーノット、デスペラード等の実績馬が揃ったが、この時の大佐は生涯最高の走りだった。道中は口向きの悪さを見せずに中団後方でじっくりと脚を溜め、直線で馬場のど真ん中へ持ち出し、追い縋るカフナを振り切り、先に抜け出したルルーシュを交わしてのレコード勝ち。逆手前に替わる癖も最後に出た程度だった。
自分の直感が現実のモノになっただけでなく、秋のGⅠ戦線は参加賞で終わるまいという期待を抱かせるに十分なパフォーマンスだった。父の現役の最終目標であり、出走出来なかったジャパンCで一世一代の大仕事をやってのけるんじゃないかと夢見たが・・・それが大佐にとって最初で最後の重賞勝利になるとは夢にも思わなかった。

休み明けのオールカマーは調整不足で右回りだったので仕方ないにしても、AR共和国杯では坂上で失速して8着に沈み、ジャパンC出走は断念。実を取りに行った金鯱賞も目黒記念時の末脚は見られずの6着。
翌年はダートに矛先を向けての二刀流路線を歩むが、初戦の川崎記念こそホッコータルマエから半馬身差の2着に健闘したものの、後は走る度にパフォーマンスを落としてしまう。連覇を期待した目黒記念は直線半ばで不利を受けて消化不良な6着。
初めは【トップガン産駒は終わったと思わせてもうひと山ある】という持論を期待していたが、いつしかその期待も小さくなっていった。7歳春のメトロポリタンSはかなり小粒なメンバーながら【これで見せ場作れなかったら・・・】という弱気な気持ちだったが・・・


・・・俺達の大佐が帰ってキタ━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)`Д´)-_-)冫、 )ノД`)=゚ω゚)━━!!!

2年ぶりに叫んでみたwww

全盛期に戦ってた相手よりも格段に落ちる面子、上がりにしてもメンバー3位と特別切れたわけでもなく、既にGⅠ云々言えるレベルではないのは判っていた。
しかし、先頭でゴールした大佐を見てると【色々あるけど、やっぱり競馬って止めらんねえわ】って心底思った。馬券が当たった外れた、GⅠを勝った負けただけでは語れない競馬の醍醐味を改めて教えられた大事なレースとなった。

その後の大佐は屈腱炎を発症したのもあって二度と先頭でゴールする事はなく、4度目の目黒記念で14着に敗れたのを最後に現役を引退した。
まだトラキチシャチョウがOPにいるとはいえ、GⅠを意識させる産駒は大佐が最後だろう。非社台・非サンデー系内国産種牡馬の雄として2000年代のリーディングサイアートップ20の常連だったマヤノトップガンの最後の大物だったムスカテールよ、本当にお疲れ様でしたm(__)m

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My Favorite Horse Vol.27 ハクサンムーン

5年前の朝日杯FS。直線半ばで一杯になり、馬群に沈んでの殿負けに終わりながら、二の脚の速さでスタートの出負けを帳消しにしてハナを取り切ったスピード能力の高さに「上手く育てればスプリンターとして化ける」と当ブログで評価した。それが旋回癖を持つ個性的なスプリンター・ハクサンムーンとの出会いだった。

逃げ一手の脚質ながらスタートは上手くなく、むしろ若い頃はいつも出負け気味。しかし、注目する切っ掛けとなったケタ外れに速い二の脚の加速力でハナを取り切るという従来の同型馬とは違うタイプだったのも琴線に触れる要因だったのかもしれない。

だが、陣営には3歳春の時点では距離適性を伸ばす意図があったのか、1400mで控える競馬を試みられた事もあった。しかし、その試みはいずれも失敗に終わり、デビュー7戦目で後の盟友となる酒井学とのコンビで逃げ切ると、逃げ一手のスプリンターとしての道を歩む事になる。

とはいえ、類い希なるスピード能力の高さを随所に見せつつも、逃げ一手という脚質故に自分のリズムを崩されると脆かったのもあって、気になる存在でありつつも馬券で軸にしたのは試行錯誤してた条件馬時代と4歳のアイビスSD、6歳のセントウルSしかない。
展開面や馬場を考慮して予想では無印にしたレースも何度かあった。逃げ潰れる事もあったが、予想に反して逃げ粘って好走すると「やっぱり、この馬は自分のリズムで行き切らせると怖いなぁ」とケレン味のないスピードを再確認して、次走はまた注目するという繰り返しだった。

キャリアを振り返ると一番強かったのは4歳だったと言える。この年は初戦のオーシャンSで9着と逃げ潰れた以外は全て3着以内に好走してる。
特にスピード能力の高さが直千競馬にリンクしてたアイビスSDと休み明けで8分の出来とはいえ絶頂期だったロードカナロアを完封したセントウルS、前半3F32.9で入りながらもロードカナロアの2着に粘ったスプリンターズSは完成期に差し掛かった印象を与え【ロードカナロア引退後はこの馬の時代になる】とさえ思ったが・・・
まさか、セントウルS以降は2着に粘る事はあっても1勝も挙げられないとは夢にも思わなかった。GⅠを勝てる能力を持ちながらピーク時がロードカナロアと被るという、生まれた時代が悪かった的なポジに収まるとは・・・競馬に限らず、勝負の世界の残酷さを感じずにはいられない。

5歳の高松宮記念は出遅れが祟って5着、スプリンターズSは玉砕覚悟で競り掛けられて本来の逃げを打てずに大敗。6歳の高松宮記念は番手からでもリズムを守れた走りで押し切れるかと思わせたところで世界トップクラスのスプリンターエアロヴェロシティの鬼脚に屈し、スプリンターズSではリズムを欠いた逃げで失速。結果的に引退レースとなった今年の高松宮記念は逃げ争いで共倒れとGⅠでは悉くツキに見放された感じだった。

秋のGⅠ戦線に備えて帰厩したが、条件面が上がって来なかったのと7歳という年齢を考慮されて引退する事が急転直下で決まった。今後はアドマイヤムーンの後継種牡馬として優れたスピードを産駒に伝えてほしい。お疲れ様でしたm(__)m

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My Favorite Horse Vol.26 キングトップガン~2011年目黒記念~

昨年、このシリーズでナカヤマフェスタを取り上げた際、某掲示板でマヤノトップガン産駒の応援スレを立てた話をしたが、そこで親しくなった人(ナカヤマフェスタの人とは別人)から注目してるトップガン産駒として教えてもらったのが、デビュー間近だったキングこと、キングトップガンだった。丁度、10年前の今頃だったと思う。

その人が何故注目してたのか覚えてないが(デビュー戦で騎乗した池添が「大きいところを狙える器」と評してたっけ?)、デビュー2戦は勝てなかったものの、アンカツとコンビを組んでダートに転向して連勝。
そのまま順調に行けるかと思われたが、3歳6月までデビューが遅れた体質の弱さもあってか半年程休養。叩き2戦目から連勝し、準OPに目処を付けたところでまた休養と、4歳夏までのキングは順調に使えなかった。

4歳暮れに復帰したキングは体質の問題が解消されたのかコンスタントに出走するようになり、満を持して芝路線に転向する。元々、芝でデビューさせたくらいだし、アンカツも「本来は芝向き」と評価してた経緯から、この転向は当然の帰結と言えた。
ダートでは先行する傾向だったキングだが、芝では溜めて差すスタイルにシフトチェンジし、転向3戦目にしてOP入りを果たす。しかし、溜めても海猿やジョー程の切れはなかったのもあって、海猿との対決となったオーストラリアTは上がり勝負で切れ負けしての10着。
しかし、重賞初挑戦となった目黒記念はホクトスルタンの絶妙な逃げが決まる不向きなペースながら、6着まで押し上げて一定の目処を付けた。

キングは函館に移動し、巴賞から函館記念という青写真を組んだが、状態の良さから急遽予定を早めて大沼Sに出走する。
下級条件をダートで勝ち上がった経緯からダートのOPでどれだけ走れるか試したかったのか、芝ダートの二刀流で使う考えがあったのか・・・いずれにせよ、この予定変更からキングの運命が大きく変わった気がしてならない。
大沼Sで3着に敗れたキングは予定通り函館記念に登録したが、現地で起きた地震に驚いた際に左前脚球節を骨折して休養。翌年春に復帰したが、先々は通用するかに思えたそれまでの走りは影を潜め、殆どのレースで後方から見せ場のないまま流れ込むレースが続いた。
アンカツもいつしか離れて様々な騎手が乗り、次第にハンデも軽くなってダートを使ったり色んな距離を使ったが、笛吹けど踊らず。いつ見切りを付けられてもおかしくない状況となって丸2年が過ぎた。

大阪―ハンブルクCに出走したキングは18頭中18番人気。最軽量50キロとはいえ、3年近く掲示板に載ってない8歳馬には妥当な評価と言えたが、中団で脚を溜めてたキングは突然スイッチが入り、翌年の天皇賞を制したビートブラックにクビ差の2着と激走。
流石に紛れ一発と思われたか、続くメトロポリタンSでも14頭中11番人気だったが、最内から抜け出すのに手間取らなければ掲示板はあったかもという6着に健闘。

トップガン産駒は終わったと思わせてもうひと山ある。これは俺の持論だが、この馬でそれが実証されるとは思わなかった。そして、3年ぶり2度目の出走となった目黒記念を迎える事になる。

2戦連続芝2400mで好走、運良く空いていたとはいえ、ノリが51キロで乗ってくれたのもあって7番人気と穴人気してたキングは内ラチ沿いのコーナリングから3番手に付ける積極策。
向こう正面で2番手に上がり、4コーナーで逃げ馬を交わして早々と先頭。坂下では後続に3~4馬身くらい離しての逃げ込み態勢。流石に坂上で脚が上がりかけたが、後続も馬場に脚を取られて差はなかなか詰まらず。1番人気ハートビートソングの追撃をクビ差凌いだところがゴールだった。
この日は家で中継を見ていたが、4角先頭から思わず立ち上がってゴールまで叫び通しだった。3~40分前にムスカテールがピンナの糞騎乗で負けてた反動もあり、馬場を見越した積極策でキングを勝たせたノリの神騎乗に心底痺れた。応援馬券を含めた馬券も大勝利と予想でも会心のレースだった。

そして、本来なら3年前に出走してた筈の函館記念に出走したキングは直線半ばまで内ラチ沿いに張り付き、ゴール前で先に抜け出したマヤノライジンを交わす省エネ騎乗で重賞連勝。ただ、雷神を取り上げた際にも書いたが、このレースは休日出勤で馬券を買い損ねた悔しさから複雑な心情だったりする。
重賞連勝で「秋にはメルボルンCも視野に」という、それまでの状況から考えられない仰天プランも出たが、重賞3連勝を狙った札幌記念は逃げる競馬が合わなかったか、直線で呆気なく失速して10着と大敗。いつしか、メルボルンC出走プランも立ち消えとなった。

その後のキングは目黒記念と同条件のAR共和国杯で6着に入った以外は確変が入る前の状態に逆戻り。翌年の福島記念(15着)を最後に現役を引退し、福島競馬場の誘導馬へと転身して現在に至る。

キングが波瀾万丈の現役生活を送った数年間は内国産種牡馬として一定の地位を築いたトップガンが徐々に活力を失い、重賞戦線を賑わせた産駒が少しずつ姿を消して行く過渡期の数年でもあった。
俺が某掲示板に立てた応援スレもキングが重賞連勝してた頃まではそれなりに賑わっていたが、次第に過疎り出して現在では俺以外の書き込みは殆どない。
キングを推してた人は俺が一時期掲示板を離れた時期に血液の病気を患い、書き込む頻度が減った。俺が戻って来てからは数ヶ月に一度やり取りする事が何度かあったが、震災の前後から書き込みが途絶えた。

尤も、某掲示板自体がここ2、3年でかなり過疎化が進行しており、離れた人が戻って来る可能性は現実的に考えれば限りなく低いだろう。しかし、現時点で俺はスレを畳むつもりはない。
彼らがいなければ、まがりなりにも10年以上その掲示板に居続けなかったし、こうしてブログを始める事もなかった。前にも書いたが、来る者拒まず、去る者は戻って来るまで待つのが信条。たとえ掲示板での交流でも受けた恩義は忘れてはならないと思ってる。

別の馬の応援スレだが、過疎って似たような状況になって2年くらい経った頃、かつての住人が戻って来て暫く交流があった前例もある。戻って来る可能性はゼロではないのだ。
福島開催の中継で誘導馬をやってるキングを見ると、たまに件の人を思い出す事がある。またいつか、くだらないジョークと共にフラッと戻って来るんじゃないかと・・・

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